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横浜地方裁判所 昭和58年(わ)682号 判決

本籍

横浜市中区本牧三之谷九五番地

住居

右同

会社役員

馬場力

昭和五年三月二八日生

右の者に対する常習賭博、所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖本亥三男出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金刑四、〇〇〇万円に処する。

本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

特殊遊技機ゴールデンポーカー三台及び同ジャンピューター「ビッグマージャン」一台(横浜地方検察庁昭和五八年庁外領置票第一五四号の一から三まで及び二八)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一常習として、

一  久慈孝らと共謀の上、昭和五八年三月一八日、横浜市中区相生町五丁目八六番地所在珈琲アンドレストラン「クリスタル」店舗内において、

1 賭客である関一ほか一名を相手に、同店舗内に設置したポーカーゲーム機械(横浜地方検察庁昭和五八年庁外領置票第一五四号の一及び二)を使用し、右関らと現金を賭け、盤上に表示される五枚のトランプカードの組合せいかんにより勝負を争う方法による賭博をして金銭の得喪を争い、

2 賭客である渡部正幸を相手に、同店舗内に設置した麻雀ゲーム機械(前記庁外領置票番号の三)を使用し、右渡部と現計を賭け、盤上に表示される一四個の麻雀牌の組合せいかんにより勝負を争う方法による賭博をして金銭の得喪を争い、

二  武山晶次らと共謀の上、前同日、同町二丁目五二番地所在飲食店スナックバー「オルゴール」店舗内において、賭客である高橋春夫を相手に、同店舗内に設置したポーカーゲーム機械(前記庁外領置票番号の二八)を使用し、右高橋と現金を賭け、盤上に表示される五枚のトランプカードの組合せいかんにより勝負を争う方法による賭博をして金銭の得喪を争い、

もって賭博をし、

第二  前記「クリスタル」、「オルゴール」等の名称を用い、前記二店舗ほか二店舗においてポーカーゲーム機等を設置した飲食店を営むかたわら、同ゲーム機の賃貸業等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れることを企て、収入の一部を除外して仮名預金に預入するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、昭和五六年分の実際の総所得金額が一億七、二八三万四、九二八円で、これに対する所得税額が一億一、三五二万六、七〇〇円であるにもかからわず、昭和五七年三月一一日、同市同区山下町三七番地九号所在の所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一、四一三万円で、これに対する所得税額が二八九万二、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一億一、〇六三万三、九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和五八年四月二〇日付、同月二一日付及び同月二七日付各供述調書、並びに司法警察員に対する供述調書五通

一  司法巡査作成の特殊遊技機ビックマージャン並びにゴールデンポーカーの賭博方法についての捜査報告書謄本

第一の事実中一の点について

一  久慈孝の検察官に対する供述調書謄本四通、並びに司法警察員に対する供述調書一通及び同謄本七通

一  吉野洋子の検察官に対する供述調書謄本三通、並びに司法警察員に対する供述調書一通及び同謄本三通

一  関一、浅井茂及び渡部正幸の司法警察員に対する各供述調書謄本

一  司法巡査作成の「店内見取図の作成について」と題する報告書謄本(検察官証拠請求番号四)

一  司法警察員作成の捜索差押調書(前同番号一)

同二の点について

一  武山晶次の検察官に対する供述調書謄本五通、並びに司法警察員に対する供述調書一通及び同謄本六通

一  両角昭二の司法警察員に対する供述調書三通

一  高橋春夫の司法警察員に対する供述調書謄本

一  司法巡査作成の「店内見取図の作成について」と題する報告書謄本(検察官証拠請求番号四二)

一  司法警察員作成の捜索差押調書(前同番号四〇)

第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和五八年六月二二日付供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書八通

一  大蔵事務官作成の告発書、脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料

一  押収にかかる五六年分の所得税の確定申告書一袋(昭和五八年押第四七〇号の二)

(量刑の理由)

本件は、被告人が常習賭博を営業的、かつ、大規模に行なったうえ、その所得を不正な方法により秘匿して一億一、〇〇〇万円余もの多額の脱税をした事案であって、その犯情は極めて芳しくないと言わなければならず、この点に鑑みれば検察官の求刑はまことに相当と考えられるので求刑どおり量刑することとするが、被告人が現在ではポーカーゲームの営業も廃止して正業に従事していること、脱税分についても自己の財産を処分して納税に努力したこと、その他弁護人が弁論において主張する被告人に有利な、又は、同情すべき一切の事情を考慮し、主文第二項のとおり懲役刑の執行を猶予することとした。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人の判示第一の所為は、刑法一八六条一項、六〇条に、同第二の所為は、所得税法二三八条一項、二項に各該当するが、第二の罪につき懲役と罰金を併科することとし、以上は刑、法四五条前段の併合罪の関係にあるから同法四七条本文、一〇条により重い第二の罪の懲役刑に法定の加重をした刑期範囲内及び第二の罪所定の罰金額の範囲内において被告人を懲役二年及び罰金四、〇〇〇万円に処し、同法二五条一項により、本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、特殊遊技機ゴールデンポーカー三台及び同ジャンピューター「ビッグマージャン」一台(横浜地方検察庁昭和五八年庁外領置票第一五四号の一から三まで及び二八)は、第一の犯罪行為の供用物件で、犯人である被告人以外の者に属しないものであるから、同法一九条一項二号、二項によりこれを没収する。

(裁判官 奥村誠)

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